りぼんの読書ノート

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わが心のジェニファー(浅田次郎)

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アメリカ人青年のラリーは、日本贔屓の恋人ジェニファーから、結婚の条件として日本への一人旅を命じられます。幼い頃に父母が離婚したため、元軍人で日本嫌いの祖父に育てられたラリーの、初めての日本体験は困惑することばかり。

ウォシュレット、カプセルホテル、分刻みの新幹線、懐石料理、コンビニ、着物女性、B級グルメ、温泉、丹頂鶴・・。東京、京都、大阪、別府、釧路と続いたラリーの旅は、驚くことばかり。そしてラリーの驚きは、私たちが「普通」と思っていることが、決して「普通」ではないことを教えてくれるのです。まさに、浅田版の「ユーは何しに日本へ?」。

しかし、本書はそれだけでは終わりません。なぜジェニファーは釧路湿原で丹頂鶴を見るように勧めたのか、なぜ祖父は日本を嫌っていたのか、最後はラリー自身の問題に跳ね返ってくるのです。このあたりは、浅田さんが得意とするところですね。

ラリーが参考にしていた「ポジ」と「ネガ」の2冊のガイドブックは楽しそう。実在しているのなら、読んでみたいものです。とくに、物事を悪意で解釈していく「ネガ」の方を。

2016/4