りぼんの読書ノート

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役小角絵巻 神変(山本兼一)

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7世紀後半に実在したとされる修験道の開祖・役小角を、同時期に中央集権の国造りを進めた大和朝廷に対する反逆者として描いた伝奇小説です。

時の支配者は、女帝持統。実子・草壁皇子を失い孫の軽皇子(後の文武天皇)に皇位を継がせようとする一方で、亡夫・天武天皇の遺志を継いで藤原京建設という大業に乗り出します。しかしそれは、今まで自由民であった山の民にも、支配の輪を広げていく過程でもあったのです。彼女を補佐して律令制を整えていくのは藤原不比等であり、詩で彼女の心を慰める役割を担うのが柿本人麻呂

前半は、圧倒的武力を誇る大和朝廷に対して、山の民を率いてゲリラ戦を挑む役小角の姿が描かれます。このあたりは、まだ普通の歴史小説。ところが後半になると両者の闘いはヒートアップしていき、ほとんど「伝奇の世界」に入り込んでしまう。小角が蔵王権現を顕現させると、対する持統はアマテラスを召喚。天地のはじまりにまで遡る戦いは、どのように決着がつくのでしょうか。

文庫版の解説を記した大沢在昌氏は、「南方や大陸からの渡来人を多く含んでいた古代日本が、単一民族であるかのようになっていく過程に興味がある」という主旨のことを書いていました。仏教が大きな役割を果たしたことは間違いないと思いますが、本書は少々やりすぎですね。まあ、役小角伝説との整合性を取ろうとしたということなのでしょうが・・。

2016/3