りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

子供時代(リュドミラ・ウリツカヤ)

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1949年のモスクワらしき町で、中庭のあるアパートに住む子供たちを主人公とした連絡短編集。子供たちは誰でも、「奇跡の瞬間」を経験するものなのです。

「キャベツの奇跡」
弟を連れてお使いにでた少女ドーシャのポケットには穴が開いていました。お金を落としてしまってキャベツを買えなかった少女に、奇跡が起こります。

「蝋でできたカモ」
行商の物々交換屋が提供するがらくたでも、子供には魅力的な宝物に見えるのです。ワーリカが家のドアマットを持ち出して交換した蝋細工はすぐ溶けてしまったのですが、彼女の心にはいつまでも子載っていたのです。

「釘」
田舎に預けられたセリョージャに、釘の打ち方を教えてくれたのは、年老いたひいおじいさんでした。それは2人にとって、最初で最後の出会いになりました。

「つぶやきおじいさん」
兄の留守中、兄が大切にしていた時計を壊してしまったジーナは、困り果ててしまいます。彼女を助けて時計を修理してくれたのは、目の見えないおじいさんでした。「年を追うにつれてくっきりしてくる」記憶もあるのです。

「幸運なできごと」
狭い地下室に大勢の家族と住んでいるタタール人のハリマが寝具の虫干しをすると、同じアパートに住むおばあさんが、いたずらっ子の孫コーリカを使って意地悪をします。でも、互いにいがみあっていた異民族同士であっても、心が通じることもあるのです。

「折紙の勝利」
生まれつき足が悪く、いじめられているゲーニャのために、母親が開いた誕生会。ゲーニャの反対を押し切って、いじめっ子たち全員を招待した母親は、ささやかな奇跡を起こすのでした。

自分がどんな「奇跡の瞬間」を体験していたのか、子供時代に思いを馳せさせてくれる作品です。著者と同時代に近くで育ったという画家、ウラジーミル・リュバロフの挿絵も効果的です。

2016/1