りぼんの読書ノート

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酒仙(南条竹則)

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1993年に「第5回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞」を受賞した作品です。

酒で財産を使い果たした旧家の御曹司・暮葉左近が主人公。最後の楽しみとして、熱酒風呂につかったまま死のうとしたところ、「蓬莱酔八仙人」のひとりである鉄拐李の目にとまって、命を救われます。彼こそは、千年に一度誕生する、眉間に酒星の印を有した「酒仙」であり、やがて来るべき使命を持つ身だというのです。

蘇生の秘儀を施された左近は、徳利真人の名を与えられ、南総山中で密かに活動する秘教・金樽教団に預けられます。とりあえずは、ひたすら酒を呑んで酒徳を積むのが仕事ということで、まさに願ったり叶ったりの日々。ところが、彼の前に宿命のライバルが登場。「魔酒」を醸して世に広めようとする魔王・三島業造との一騎打ちこそが、左近に課せられた使命なのでしょうか。

三島の唱える詩仙・李白の絶句に対して、ウマル・ハイヤームのルバイヤートで対抗する左近。まさに互角の戦いが続く中、鉄拐李仙人が仕掛けておいた罠が勝敗を決したと思われたのですが・・やはり左近は自らの力で勝利しなくてはならないのでした。

古今東西の美酒麗食と、古典神話からの引用をちりばめ、酒飲みの桃源郷を描き出した異色の作品です。下戸の方は、読むだけで酔ってしまうかもしれませんので、ご注意を。

2016/1