りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

エッフェル塔くらい大きな雲を呑んでしまった少女(ロマン・プエルトラス)

イメージ 1

オルリー市街の理髪店の客となった航空管制官レオは、理髪師の老人を相手に奇想天外な話を語り始めます。それは、アイスランドの火山噴火の影響でヨーロッパ中の空港が閉鎖された日に、オルリー空港から飛び立ったひとりの女性の物語でした。

その女性プロヴィダンスは、ビキニ姿で空港管制塔に現れて「今すぐモロッコへ飛ぶ離陸許可を出して欲しい」と訴えたというのです。彼女には、養女に迎える約束をしたモロッコの少女ザヘラの病状が悪化したので、大至急迎えに行く必要があったのでした。しかも、飛び立つのは飛行機ではなく、彼女自身だというから驚きます。

かくして、プロヴィデンスが飛べるようになった経緯と、彼女のモロッコへの冒険旅行が語られるのですが、レオはなぜ、この話を詳しく知っているのでしょうか。そして、彼が理髪店の老人に、この話をしている理由は何なのでしょうか。レオは悲しみのあまり、物語の結末を話せなくなってしまうのですが・・。

IKEAのタンスに閉じこめられたサドゥーの奇想天外な旅の著者による、心温まる物語です。「この話のすべては事実だ。なぜなら、最初から最後までぼくがこしらえたのだから」という、冒頭のエピグラフが効果的です。

2015/9