りぼんの読書ノート

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獣の奏者2.王獣編(上橋菜穂子

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第2部に入って、物語は大きく動き出します。

傷ついた王獣の雛を救いたい一心で、献身的に治療にあたったエリンは、リランと名付けた雛と心を通わせることに成功。王獣の鳴き声に似せた竪琴の音を用いて、リランとの「会話」すら部分的にできるようになるのですが、それは許されない「操者の技」だったのです。エリンは、亡き母の一族である霧の民から、警告を受けるのですが・・。

一方で、真王家と大公家の関係は、緊張の度を深めていました。真王ハルミヤが、行幸の帰途に闘蛇軍の襲撃に逢うという事件が起きて、現状維持はもはや不可能。大公家の跡継ぎである青年シュナンは、次代の真王セイミヤに対して、「全面的な戦闘」か「結婚による両家の統合」の選択を迫ります。

エリンは、王国の明暗を賭けた闘争に巻き込まれてしまうのでしょうか。信念を貫いて、より苦しい道を歩むことになるのでしょうか。ここにきて、真王の護衛士であるイアルの存在がクローズアップされてきます。彼もまた、使命と信念の間に立って、苦しい道を選ぼうとしているのです。エリンとイアルは、「第三の道」を切り開くことができるのでしょうか。

「決して人に馴れぬ孤高の獣と、それに向かって竪琴を奏でる少女」という心象がきっかけとなって始まったという物語は、この巻で完結しています。読者の要望とアニメ化に背中を押されて、続編が書かれることになるのですが、その気持ちは理解できます。まだ全ての謎が解かれているわけではありませんので。

2015/6