りぼんの読書ノート

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百寺巡礼 第8巻 山陰・山陽(五木寛之)

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五木寛之さんが、TVの企画番組で全国100の古寺を巡礼した記録です。第4巻 滋賀・東海に次いで、第7巻を読んだのは、GWに山陰旅行をしたからです。鳥取県にある三佛寺と大山寺を訪れてきました。

「第71番 三佛寺 役行者が建てた断崖の堂宇をめざして」
毎年死者も出るという本格的な山岳登山の末に、ようやくたどりつける断崖絶壁にはめ込まれたかのような「投入堂」は鳥取県唯一の国宝建築です。これを「日本一の大建築」と呼んで執着を見せたのが、写真家の土門拳でした。著者は、「なぜここに作ろうとしたのかという人間の心の動きを含めての言葉であろう」と解釈していますが、同感です。

「第72番 大山寺 霊山を仰ぎ、神仏を信仰する寺」
古代は表玄関であった山陰・北陸で、白山と並ぶ「神の山」が大山です。熊野山・金峯山と並ぶ三大修験道場でもありました。堂宇越しに見る大山は、荒々しい姿でした。

「第73番 清水寺 山陰の「キヨミズさん」に幟がはためく」
登れる三重塔を持つ「もうひとつの清水寺」には、色鮮やかな幟がはためいているとのこと。著者は、「寺というものは信仰のよりどころというだけでなく、庶民のこころや文化や歴史など、いろんなものが結集している場所でもある」と述べています。

「第74番 一畑薬師 目のお薬師様に詣でる人びと」
宍道湖のほとりに庶民が作った「目のお薬師様」です。薬師如来信仰は、身体の癒しを求める現生利益なのですが、それも「信仰への一つの入り口」なのでしょう。

「第75番 永明寺 津和野の歴史を物語る小寺の静けさ」
かつての名刹廃仏毀釈で面影を失い、今は津和野の小寺になっています。「時間がゆっくりと流れているような津和野の中でも、さらに時間が止まったようなおだやかさを感じる」、心が安らぐ寺とのことです。

「第76番 東光寺 萩の町にたたずむ中国風の菩提寺
宇治の萬福寺を本山とする、隠元の開いた黄檗宗の寺もまた、廃仏毀釈の影響を受けたそうです。毛利氏のみを檀家とする寺の在り方のせいだったのでしょうか。

「第77番 瑠璃光寺 嵐の翌日に見た五重塔の美しさ」
著者は、「瑠璃光寺の塔の強さは、二百年にわたって栄えた大内文化の力そのもの」と語っています。萩の風土を形作っているものは、毛利文化や維新の志士だけではないのです。歴史というものは、重層的なのですね。国宝の五重塔は、京都の醍醐寺と、奈良の法隆寺と並ぶ「日本三名塔」だそうです。

「第78番 阿弥陀寺 東大寺を再建した老僧のパワー」
東大寺復興の大勧進職を務めた俊乗坊重源上人によって、1187年に建立された寺院です。すぐれた宗教者であるだけでなく、一流のプロデューサーでもあった重源の像は、力強いエネルギーに溢れているとのこと。

「第79番 浄土寺 海の見える寺に息づく共生のこころ」
聖徳太子創建と伝わる、中国地方屈指の古刹です。数年前に尾道に来た時に訪れました。太子信仰も、時宗も、浄土真宗も融和させたて共生する姿勢は、穏やかな瀬戸内の海のようです。

「第80番 明王院 東洋のポンペイと隣りあった古寺」
南北朝時代の1348年に建立された純和様の五重塔を持つ寺は、江戸初期に水没した草戸千軒町遺跡のすぐ隣にあるとのことです。著者はこの寺から、「信仰と時間が折り重なっている姿」を感じ取っています。

2015/6