りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2015/4 キャパの十字架(沢木耕太郎)

先月の『凍』に続いて、沢木耕太郎さんのドキュメンタリー『キャパの十字架』を読みました。『深夜特急』のイメージが強すぎて、今までまともに読んだことがなかったことを後悔。著者自身の観点を明確にした、「私ノンフィクション」の面白さを堪能しました。

大島真寿美さんの『あなたの本当の人生は』は、啓発もののようなタイトルで損をしている気がします。「書くこと」をテーマにした素晴らしい小説なだけに、少々惜しまれます。テーマをストレートに表したタイトルということは理解できるのですが。
1.キャパの十字架(沢木耕太郎)
戦場カメラマン「キャパ」を一躍有名にした、一枚の写真。スペイン内戦時に撮られた「崩れ落ちる兵士」については、発表当初から真贋論争がありましたが、前後の写真、実風景との一致、多くの証言などから「真相」に迫ったスリリングな作品です。第17回司馬遼太郎賞の受賞作品です。

2.善き女の愛(アリス・マンロー
2012年のディア・ライフをもって引退を表明した著者ですが、未邦訳だった作品も多いのですね。本書は1998年に出版された、イラクサの直前の短編集です。タイトルとなった短編は完成度が高く、自伝的要素が盛り込まれている作品には興味深いものがあります。

3.侍女の物語(マーガレット・アトウッド)
近未来のアメリカ東部。キリスト教原理主義者によるクーデター政権下の、徹底した「女性管理社会」を描いたフィクションです。名前も自由も奪われて、出産のための道具である「侍女」とさせられた女性は、脱出を図るのですが・・。30年前の作品ですが、人類にとって不幸なことに、不寛容な原理主義に基づくディストピアは「イスラム国」という形で現出してしまったように思えます。願わくは、「イスラム国」に対峙する国々が「敵に似てくる」ことなど起きませんように・・。



2015/4/29