りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

山内一豊と妻千代(中島道子)

イメージ 1

さしたる戦功もないのに「土佐24万石」を得た山内一豊の成功の鍵は、賢妻と言われる千代の存在にあったように、巷間伝えられています。「千代=賢妻」説をを決定的にしたのが、大河ドラマの原作ともなった司馬遼太郎さんの『功名が辻』ですが、本書はそこに新たな視点を持ち込みました。

・・といっても、大筋はそれほど変わりません。司馬さんとの違いは、「浅井家家臣の娘」説ではなく「郡上八幡城主・遠藤氏の娘」説を採用していることと、「賢妻伝説」を少々割り引いて偶然や他者の助けもあったとしているくらいでしょうか。

しかし、最も異なっている点は「女性の気性」かもしれません。本書の千代は、後年親しく交わったという高台院(秀吉の妻おね)とともに、かなり嫉妬深いのです。そして、女性の嫉妬が起こしたという、跡継ぎに関する恐ろしい噂を否定していないのです。実はそのあたりが、女性作家の怖い所かもしれません。

2015/4