りぼんの読書ノート

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虚言少年(京極夏彦)

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やる気のない、モテない、冴えない少年たち。人気者でも、イジメっ子でも、嫌われ者でも、秀才でもなく、何の特徴もない3人の少年たちには、ひとつだけ共通点がありました。それは、「オモシロイことが大好き」ということだったのです。しかも彼らが狙うのは、ドリフでいうと大ヒットした加藤茶のギャグではなく、高木ブー荒井注がチラッと見せる「素の表情」というのですから、かなりの通好み。

内本健吾。表面的には大勢に迎合。自分に危険が及びそうなときには単独行動もするけれど、「うっかり」を装うことは忘れません。彼は「嘘つき」なのです。

矢島誉。丸顔で素直だが、破壊力抜群の天然ボケの持ち主。女子にモテたい一念はありながら、モテないことばかりし続ける才能の持ち主。

京野達彦。人心を掌握する能力と、空気を読む能力に優れるが、それを仲間以外に見せることはありえない。狭く偏った知識にかけては、人後に落ちません。「京極堂」と通じる人物ですね。

こんな3人が、「3万メートルから落下」という間違いに爆笑し、なぜか生徒会長に立候補しては人気のなさを見せつけ、演劇会では無駄に月に吠え、運動会では団結を避けるために立ち回る。笑いを仕掛けることには熱心で、戦いからは徹底的に逃げ回り、責任を取る必要のない第三者的ポジションの確保を何にも増して優先させる。

ところが最終章で、そんな3人が連携して主役級の活躍をしなくてはならない事態が起こるのです。名づけて「屁の大事件」。笑えます。脱力感たっぷりです。それでいて読後に、「力を入れすぎないこと」の重要性に気づかされるのです。おそらく著者も楽しんで書いているのでしょう。力を抜いて読みましょう。

2015/4