りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

私にふさわしいホテル(柚木麻子)

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元アイドルと新人賞を同時受賞して無視される。元アイドルを売り出すために単行本出版を阻止される。有名作家と大喧嘩してペンネーム変更を余儀なくされる。編集者に裏切られる。同姓の実力派新人の登場ですっかり霞む。やっとの思いで候補になった文学賞の審査委員長は、大喧嘩した相手の有名作家。

作家になりたいという思いの強さは誰にも負けず、上昇志向も自己顕示欲も人一倍強い中島加代子を、絶体絶命のピンチが次々と襲います。「名前に木の文字が入ると売れる」という独自のジンクスから、ペンネームを「有森樹李」と変更し、学生時代からの友人の編集者を利用し、不倫小説がベストセラーになった文壇の大御所・東十条宗典を籠絡し、野望の実現に向かって邁進するのですが・・

自分の名前が角田光代川上弘美と同列に並ぶことを望み、宮部みゆき東野圭吾らのベストセラー作家専門の万引き犯人には「どうせ盗むなら自分が本当に欲しい本探して盗め」と説教し、宮木あや子朝井リョウは実名で登場させるというサービスは、感動もの。文学賞の受賞に向けた策略や、売れてからの復讐劇にはちょっと引いたけれど、このくらいのアクの強さは許容範囲。楽しい作品でした。

ところで、主人公のペンネーム「有森樹李」には「木の文字が4つも入っている」とのことですが、「柚木麻子」にだって、しっかり4つ入っています。文壇の大御所や編集者に対する思いには、かなり本音も入っていると見ましたが、いかがでしょうか。

2015/3