りぼんの読書ノート

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キケン(有川浩)

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児童文学家の石井桃子さんが「大人になってからのあなたを支えるのは、子ども時代のあなたです」と言っていますが、「子ども時代」の定義は「子ども心を持っている期間」と読み替えてもいいのかもしれませんね。本書に登場する、大学時代を「爆発的熱量」とともに駆け抜けた理系男子たちは、その期間の出来事と仲間たちを、生涯忘れることはないのでしょうから。

ごく一般的な工科大学である成南電気工科大学のサークル「機械制御研究部」の略称は「キケン」。ユナボマーの異名を持つヤバイ部長と、大魔神と呼ばれる武闘派の副部長に率いられたサークルは、危ない集団として周囲から忌み嫌われているのです。「キケン」に入部した新入生の視点から語られる物語は、部長の異名の所以、副部長の失恋、伝説の文化祭、他部との対決、壮絶なロボット相撲大会、拳銃製造未遂。

これらのエピソードを、卒業10年後に振り返るという構成がいいのです。そして「あの楽しかった場所は現役に譲り渡さなくてはならないのだ」と思い切ったときに起きた「大仕掛け」のエピローグ。まさに、「10年後の君たちを支えているのは、10年前の君たち」なんですね。たぶん、20年後も、30年後も・・。

ちなみに、本書のモデルは、ご主人だそうです。

2014/12