りぼんの読書ノート

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機械探偵クリク・ロボット(カミ)

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1884年にピレネー山脈の麓に生まれ、闘牛士を志したものの断念してパリで小説家となったという著者が、戦後すぐの時代に書いたユーモア・ミステリ・シリーズです。といっても全2作であり、どちらも本書に収録されています。

探偵役を務めるのは、古代ギリシャの科学者の子孫であるジュール・アルキメデス博士が発明した「クリク・ロボット」。四角い頭に小粋なチロリアン・ハットをかぶり、鋼鉄の身体にチェックのスーツを着こなすという古典的な姿。身にまとう装備は、推理バルブ、仮説コック、推理発見センサー、思考推進プロペラ、論理タンク、誤解ストッパー、事実コンデンサーなどの謎の部品群。なぜか暗号で紙に書かれた謎解きを口から吐き出して披露するという、わけのわからなさ。

「五つの館の謎」では、5つの建物に囲まれた庭園で、銃声とともに額にナイフを突き刺されて殺された男の謎を解き明かします。ヒントは「泥棒カササギ」。もちろん役に立たない警部から、犯人に疑われた作家が恋愛に夢中なのは、さすがにお国柄。

パンテオンの誘拐事件」では、パンテオンからヴォルテール、ルソー、ユゴー、ゾラの遺体を盗み出した一味と対決。ヒントは「カタコンベ」。新婚旅行中の葬儀屋夫婦とか、5つの名前を持つ「実欣主義者」のA・B・C・D・E・F・ジェイなどのユニークな脇役も登場。道化師の名誉が問題になる点も、やはりお国柄なのでしょう。ついでながら、「カフェでふんぞりかえっている尊大な親爺」とされた実存主義の領袖サルトルは同時代人ですね。

当時のシュールリアリストたちからも愛読されていたという、楽しい作品でした。

2014/7