りぼんの読書ノート

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ビブリア古書堂の事件手帖 4(三上延)

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江戸川乱歩のコレクションをめぐる長編作品となったシリーズ第4作では、ついに篠川姉妹の失踪した母親・智恵子が登場します。しかも、江戸川乱歩の古書をめぐっての登場というあたり、さすがにミステリめいた存在です。

学校法人経営者として厳格な教育家であった鹿山明が、妾であった来城慶子に遺したのは、膨大な乱歩コレクションでした。それをビブリア書店に一括で扱わせるために慶子が出した条件は、やはり明が遺した精巧な金庫を開けること。慶子をよく思っていない鹿山家の遺族が持つ鍵と、暗証番号となる謎の言葉を手に入れて欲しいというのです。

ビブリア書店の店主・篠川栞とバイト店員・大輔は、鹿山明の乱歩コレクションに、母・智恵子が関わっていたことに気づきます。さらに、失踪以降はじめて娘たちの前に姿を現した智恵子は、金庫の中にあるのは、乱歩が破り捨てたと伝えられる、ある作品の初稿があるのではないかと推理を展開。ここに至って謎解きは、母と娘の知恵比べの様相を呈してくるのですが・・。

鹿山明が仕組んだ秘密の隠し場所や、来城慶子の入れ替わりトリック、さらには乱歩の遺稿をめぐる謎など、乱歩の世界が反映されたかのようなミステリ部分も楽しい作品です。しかしそれより印象に残ったのは、リアルタイムで乱歩を読んだ少年少女たちが抱いた「ドキドキワクワク感」ですね。読書体験がもたらす高揚感の素晴らしさが、全編を通じて溢れていた作品でした。

ところで、智恵子が家族をおいて失踪した理由は、とてつもなく入手困難な古書を探すためだったようです。智恵子の仲間となるよう誘われた栞子は、母と行動をともにするのでしょうか。シリーズを通しての転機となる巻だったように思えます。

2014/7