りぼんの読書ノート

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緑色の濁ったお茶あるいは幸福の散歩道(山本昌代)

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神足歩行術のための秘薬に関する薀蓄ではじまる本書は、一見すると「普通の家族の日常」をさりげなく描いた小説のようですが、読者を不安にさせる要素を多分に含んでいます。

「四肢機能全廃」という重い病を抱えながら、のびやかな性格の妹・鱈子。小説家になる夢を持ちながら、どこかおっとりしている姉・可季子。ストレスがかかると三半規管の異常でめまいを起こしてしまう母親・弥生。定年後ウォーキングの趣味に励んでいたものの、直腸癌が発見されてしまった父親・明。

父親の手術も済んで一段落・・と思いきや、鱈子さんが血まみれ死体や手術台が登場する不気味な夢を見て、本書は終わります。それを「ゆうべ色彩豊かな夢をみたわ」で済ましてしまう鱈子さんも不思議ですが、それだけではなく、途中に登場する家の外での不気味な会話も放置されたまま。

あるいは本書は、「生きる」ことに関する著者のイメージなのかもしれません。不気味で不思議で答えのないものと付き合っていくことこそが「日常」だとでも言っているのでしょうか。ところで、「緑色の濁ったお茶」なるものは本文中に登場していました?

2014/2