りぼんの読書ノート

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ビブリア古書堂の事件手帖 2(三上延)

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北鎌倉の古書店を舞台にした人気シリーズの第2弾。洞察力と推理力と古書知識を持つものの、本に関すること以外では人見知りの女性古書店主・篠川栞子が、本を読めないバイト青年・大輔をワトソン役にして、本に関するミステリを解き明かしていく連作短編集ですが、全巻を通じて流れているのは、失踪した母親に栞子が抱いている複雑な感情です。

アントイ・バージェス『時計じかけのオレンジ
かつて万引きをしたものの今では常連になっている女子高生・小菅奈緒が、自慢の妹が書いた読書感想文を持って相談にきます。感想文はよく書けてはいるものの、こんな暴力的描写の多い作品を読んでいいのかと家庭で問題になっているとのこと。感想文を一読した栞子は、筆者は本を読んでいないと断言するのですが・・。
キューブリックが映画化した本書に、2通りの結末があるとは知りませんでした。

福田定一『名言随筆 サラリーマン』
栞子と大輔が古書の宅買いに向かった先は、大輔が高校時代に交際していた晶穂の実家。亡くなった父が、蔵書をビブリア古書堂に売るように指示していたとのこと。どうやら晶穂の家庭環境はかなり複雑なようですが、亡父の真意はどこにあったのでしょう。文壇デビュー前の司馬遼太郎さんが、本名の福田定一で本を出していたことなど、もちろん知りませんでした。

足塚不二雄『UTOPIA 最後の世界大戦」
藤子不二雄が足塚不二雄のペンネームで書いた最初の単行本には、とてつもない値段がついているそうです。亡父のコレクションにあったという本は、父が30年前にビブリア古書堂から格安で購入したものとのこと。当時書店で働いていた栞子の母親・智恵子が見抜いていた秘密とは何だったのでしょうか。その上で智恵子がとった対応は、不誠実なものだったのでしょうか。

坂口三千代『クラクラ日記』
プロローグとエピローグのタイトルになっているのは、10年前に失踪した智恵子が栞子に残していった本。母親を恨んでいるはずの栞子が、この本を何冊も買っている理由は何だったのでしょう。その秘密を当ててみせた大輔と栞子の距離は縮まったのでしょうか。

2013/11