りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

オール・クリア1(コニー・ウィリス)

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ブラックアウトの続編は2分冊でした。引っ張りますねぇ。

2060年から、第2次大戦下イギリスの現地調査に送りだされたまま、戻れなくなってしまったオックスフォード大学の史学生3人の苦闘は続きます。アメリカ人記者としてダンケルク撤退を調査したマイク、郊外の屋敷のメイドとして疎開児童の生活を調査したメロピー、デパートの売り子としてロンドン大空襲下の市民の姿を調査したポリーは、救出隊を待つ一方で、別の降下点を使うために同時代にいるはずの史学生ジェラルドを探し回るのです。

3人はそれぞれ、自分が史実改変を行ってしまったのか自問します。誰かを助けたり、影響を与えたことが、何を引き起こしてしまうのか。この巻でも、チューリングアガサ・クリスティなどの重要人物と出会ってしまうマイクの狼狽はドキドキもの。そしてジェラルドがいたはずのセント・ポール寺院爆撃の夜を迎えるのですが、3人を救出に来たダンワージー先生までもが混乱に巻き込まれ・・。

前巻で感じられたドタバタ感は、本巻では徐々にシリアスさに変わっていきます。思いっきり悲劇だった航路がこんな雰囲気でした。4年後の戦勝記念日に来たことがあるポリーには同一時空に共存できないという期限があることや、その日にメロピーが見かけられたことなどが明らかにされ、悪い予感も漂ってきます。

これ以上歴史には関わらないと決意しながら、それでも3人は、目の前で苦しむ人を見捨てられません。延焼を防ぎ、救急車を運転し、人々を勇気付ける演劇を準備し、ロンドン空襲を耐えて支えあう勇気ある人々の輪に加わっていくのです。ニューヨークの9.11でも東北の3.11でも見られた光景が、ロンドンでも起きていたんですね。

本書がどのような結末を迎えるのか。最終巻を待ちきれません。

2013/9