りぼんの読書ノート

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銀盤のトレース age16 飛翔(碧野圭)

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高1の秋、ついに全日本ジュニア選手権大会に出場を果たした朱里ですが、試合当日に体調を崩し、スケート靴のトラブルにも見舞われ、絶体絶命のピンチに陥ってしまいます。でも何が幸いするかわからないもの。熱で朦朧とした中でジャンプに入る軌道を間違い、1つのプログラムの中で右回りと左回りの両方のジャンプを飛んでしまったことから、一躍「スイッチジャンパー」として有名になってしまいます。

推薦で初出場した全日本シニアでも入賞し、全く国際経験のないまま世界ジュニア選手権への派遣が決定。メディアの取材も経験しますが、皆が聞くのは左右両方のジャンプのことばかり。ジャンプ以外のエレメンツも一生懸命練習してきた朱里は「一時の話題性」だけで取り上げられることは不満ですし、彼女に出場枠を奪われたライバルの厳しい視線も・・。

そして臨んだはじめての世界大会。足の捻挫で散々な結果でしたが、やはり「スイッチジャンプ」は話題になりました。それも自分の個性のひとつと受け入れ、来年もここに戻ってくると誓うところで本作は終わります。

これまで家庭内や友人たちとの関係に悩んでいた朱里ですが、メディアやライバルとの関係が問われるなど、スケーターとしての成長とともに悩みも一段大きくなったようです。でも著者の姿勢は、スポーツ少女物語ではなく、思春期の少女の成長を描くということですから、どれもその時の朱里にとっての等身大の悩みなんです。そしてほのかな恋の予感も。

続編としての「age 17」を期待したいのですが、ここで終わっても良いのかもしれません。スケーターとしては中途半端な状態ですが、これ以上の成長物語となると、真央ちゃんや佳菜子ちゃんなど現役の有名スケーターたちの現実の物語とイメージがかぶってしまいそうですから。

2013/6