りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

月は無慈悲な夜の女王(ロバート・A.ハインライン)

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最低でも再々読ですが、何度読んでも楽しめる作品です。2076年7月4日、流刑地として開発され、地球への資源移送を義務とする月世界植民地が、独立を宣言して横暴な地球政府と戦う物語。SFですが、ベースとなっているのはアメリカ独立戦争です。

主人公はコンピュータ技師のマニー。彼はメンテナンスを担当する巨大コンピュータのマイクが自意識を持ち始めたことに気付き、友人となることを約束します。一方で、マニーが参加した反政府集会は武装勢力に襲われてしまい、月香港の反行政府組織の美人活動家ワイオと、無能を装っていたデ・ラ・パス教授と一緒に逃亡。この3人+マイクが、独立革命組織の中核となっていくんですね。

月世界の資源枯渇が目前に迫っていることを訴えて同志を増やし、地球の支配階級にもシンパを獲得。食糧難に苦しむ中国とインドには個別に接近して「敵」の分裂を画策。そしてついに行政府の警護隊が起こした強姦殺人事件をきっかけに蜂起するのですが、宇宙船もミサイルも持たない月世界は、強大な地球に立ち向かえるのでしょうか・・。

コンピュータのマイクの自意識は、ユーモアを解するようになったことから芽生えていきました。「石をぶつけてやれ」とのマイクの言葉は独特のユーモアかと思ったら、実はこれが切り札だったんですね。月の巨大カタパルトから打ち出される岩石は、地球の引力によって恐るべき効果を生み出すのですから。でも最後の勝利は、武力で得られたものではありませんでした。月世界革命政府の混乱の収め方も、地球への外交交渉も見事です。

独立戦争以来、言葉を失ってしまったかのようなマイクに向かって、マニーがつぶやく最後のセリフも効いています。「なにしろ、俺はまだ百歳にもなってないんだからな」ですって。邦訳のタイトルはまるで「月の女王様」のようですが、もともとは、適応できなければ生き残れない月世界の厳しい環境を指している言葉です。

2013/6再々読(たぶん)