りぼんの読書ノート

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濱次お役者双六 一ます目 花合せ(田牧大和)

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副題に「一ます目」とあるように、シリーズ化を前提として書かれている作品です。江戸の文政期、森田座の大部屋女形の梅村濱次を主人公とする時代ミステリ。

すっきりした姿ぶりに上品な色気。筋はいいのですが、おっとり者でおまけに幽霊趣味もある濱次は、なかなか「大化け」できないでいます。でもそんな彼に目をかけている人たちもいるのです。座元の森田勘弥に、芝居茶屋のやり手女将のお好に、隠居した名脇役女形の有島仙扇。中でも仙扇は、幼くして両親を亡くした濱次は「人情を理解できていない」と見抜いて、彼を成長させるために悪戯をしかけるんですね。

そんな濱次が、いきずりの町娘から朝顔の鉢を押し付けられたことから物語が始まります。黒猫を連れて決死の形相の町娘が「番町皿屋敷」のお菊に見えたというのですから、これは迫力負け。でもその朝顔の鉢が騒動のもとになりました。欲を出した裏方の清助が、変わり朝顔の品評会である花合せに、預かった鉢を持ち込んだ途端、その翌日に盗まれてしまったのです。

行きがかり上、事の次第を明らかにするために奔走する濱次でしたが、その裏には崩壊寸前に陥った町娘の家族と縁談にかかわる悲しい物語があったんですね。さらには、全てを知った上で町娘に協力した仙扇の思惑も・・。

仙扇の兄弟子であり、名女形と謳われながら早逝した先代の有島香風の存在がポイントですね。濱次には「幽霊趣味」があるんですし。^^

2013/6