りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

藪の奥(平谷美樹)

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後にトロイやミケーネを発掘したシュリーマンが、幕末の日本で宝探し? しかも探すのは奥州藤原氏が平泉に遺したといわれる財宝といいますから、奇想天外な物語。彼が慶応元年(1865年)に訪日したのは事実なんですけれどね。

横浜の商館には替え玉を残し、自身は髭を伸ばしてアイヌに化けて平泉にたどりついたシュリーマンは、持ち前の直観力と考古学の知識を生かして、「黄金郷ヒライズミ」の地図を解読し、秘密に迫っていくのですが、700年の間秘宝を守っていた修験者の一団に襲われてしまいます。しかも彼らをつけ狙う黒装束の一団も登場。

う~ん。ありがちな展開だ。「インディ・ジョーンズ」でも、「ダ・ヴィンチ・コード」でも見たことがあるような三つ巴の争いです。まぁ今回はシュリーマンと平泉という異色の組み合わせということで、そこそこ読めましたけど。奥州藤原氏の秘宝ではなく、義経伝説との関係だったという「秘宝」の秘密もそれほど意外ではありませんでしたしね。

ただ、日本を旅して多くの日本人と出会う中でシュリーマンの人生観が変わり、人種差別思想から抜け出していくという着想とその過程は見事でした。

2013/4