コロンビアのメデジンに住む平凡な青年マーロンは「ここで生きるなら死んだ方がマシ」と思いつめた幼馴染の恋人レイナに強引に誘われて、ニューヨークへ向かいます。もちろん密入国。違法業者への支払金は盗んだもの。パスポートも捨て、メキシコを横断して、死と背中合わせのトラベルの末にたどりついたニューヨーク。
ところがマーロンはいきなりレイナとはぐれてしまうのです。それも、ホテルの外でタバコの投げ捨てを警官に咎められ、必死に逃走して迷子になったというバカバカしい理由で・・。無一文で英語も話せないマーロンは絶望のあまりホームレスになって、レイナを探して街を彷徨います。
数ヵ月後、同郷者の経営するコロンビア料理レストランで助けられてトイレ掃除の職にありつき、やがてウエィターにまで「出世」したマーロンに思いを寄せる女性も現れますが、それでもレイナを探し続けます。そしてついに再会の日が訪れるのですが・・。
左右の瞳の色が異なるというレイナの特徴が意味するものは、コロンビアとアメリカという2つの国の間に引き裂かれた状態を象徴しているのでしょう。その証拠にマイアミで再会したレイナの瞳は、両方とも青い色に変わっています。レイナが過ごした日々については詳述されていませんが、やはり過酷なものであったことは疑いありません。
重いテーマの作品ですが、読後感は悪くありません。「愛する人が居る所こそ故郷である」との著者の想いが主人公に託されているからなのでしょう。コロンビア文学と言うとガルシア=マルケスしか思い浮かびませんでしたが、新しい世代の登場です。
2012/10