りぼんの読書ノート

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悲しみよこんにちは(フランソワーズ・サガン)

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サガン18歳のデビュー作です。陽光きらめく南仏コート・ダ・ジュールの海岸を舞台にして青春特有の残酷さをみごとに描ききった作品ですが、あらためて読むと、その完成度の高さに驚かされます。

ストーリーはいたってシンプル。放蕩者の男やもめの父レイモンと避暑地で気楽な夏休みをすごす17歳の少女セシルが、父親が再婚を決めた亡き母の友人アンヌに反感を抱いて策謀をめぐらせた結果、アンヌの死という結末に至る物語。ひと夏の出来事が少女に、「悲しみ」としか名づけようもない感情を芽生えさせるのです。

ところでなぜセシルはアンヌを嫌ったのでしょう。表面的にはアンヌに父親を奪われたくないとか、セシルの恋愛や勉学に口を挟んで欲しくないとかが理由のように思えますが、完璧で頭が良くて上品な大人の女性であるアンヌの登場が、セシルの奔放な少女時代を終わらせてしまうように思えたことが最大の理由のようです。

セシルの策謀といってもたかが知れています。父親に捨てられた愛人のエルザと、自分の恋人のシリルが愛し合ったように見せかけて父親の心に嫉妬心を抱かせ、エルザと情事を持つようにしかけただけなのですから。

しかし結局のところセシルの少女時代は終わってしまうのです。表面的には以前と変わらない生活をおくりながらも、後悔と物憂さが入り混じった「悲しみ」のほろ苦さを覚えてしまったのですから。衝撃的な作品として大ヒットしましたが、少女特有の傲慢さが失われるに至る心理状態を見事に描ききった作品だということがわかります。

主演のジーン・セバーグによる「セシルカット」を大流行させた映画にもなりました。

2012/10