りぼんの読書ノート

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東天の獅子 第3巻(夢枕獏)

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新興勢力の講道館古流柔術各派が対決する「警視庁武術試合」がついに始まります。投げ技や絞め技はもちろん、パンチもキックもあってこれはもう異種格闘技戦ですね。

第3巻の前半では、講道館代表4人の死闘が血湧き肉踊る迫真の描写で綴られます。講道館山下義韶vs起倒流・奥田松五郎は、寝技を避けて強力な投げ技を連続した山下の勝利。講道館四天王以外から唯一出場した宗像逸郎こそ、警視庁武術指南役の久留米良移心頭流の中村半助に貫禄負けしたものの、横山作次郎と西郷四朗は千葉の揚心流戸塚派の怪物、照島太郎と好地円太郎に、それぞれ死闘の末に勝利。

ここに加納治五郎が立ち上げた講道館は一躍名声を轟かせ、いよいよ新時代の到来と思われたのですが、講道館の門下生が「梟」と名乗る謎の男に次々と襲われるという怪事件が起こります。事件の鍵は会津藩秘伝の武術「御式内」と、琉球唐手の関係にあると聞いた西郷四郎は、大東流合気柔術を興した孤高の武術家・武田惣角のもとへ向かうのですが・・。

第3巻の読ませどころは「警視庁武術試合」の迫真の描写ですね。肋骨が折れ、腕が外れ、靭帯が切れ、脳が挫傷し、拳の骨がむき出しになるほどまで痛めつけられた身体で闘いを続け、命を賭けた殺し合いに喜びを感じる武術家たちの境地には「聖性」すら感じます。

「試合のために稽古をするのではなく、日々の稽古のために試合がある」との横山の言葉も至言です。

2012/5