「この国が20世紀に生み落とした偉大なポップ・オブ・キング」のモデルは、明らかにマイケル・ジャクソンです。
いたずら好きな少年が、父親から兄や姉とともに楽器と歌を仕込まれてデビューし、一躍キングへの道を駆け上っていった後のプライベート生活は謎に包まれてしまい、都心の遊園地を買い取って作った「楽園」に隠れ住み、スキャンダルにまみれながら「永遠の少年」のまま、復活コンサートを前にして51歳で急死。
本書は、そんなポップスターの実像と虚像に、残された11歳の娘の傷跡、姉の孔雀、運転手、ファン、彼を有罪と信じるジャーナリスト、彼を訴えた元少女らの視点から迫るのですが、既にマイケル・ジャクソンについて語り尽くされたことの表面だけをなぞったように思えます。
タイトルの「傷跡」は、11歳の娘の名前です。父親が「彼」なのかどうかも、母親が誰かもわからず、人前では常に仮面をかぶって顔を隠していた少女が、仮面を置いてひとり旅立っていくラストを結論とするのなら、もっと少女を全面に出して欲しかったと思うのですが・・。
2012/4