りぼんの読書ノート

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南仏プロヴァンスの12か月(ピーター・メイル)

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1989年に出版され、一躍プロヴァンスを多くの人に身近に感じさせた作品です。TVドラマにも映画にもなりました。旅行者として何度も訪れるうちにプロヴァンスに魅せられ、ロンドンを引き払って夫婦でプロヴァンスに移り住んだ著者の1年間の物語は、あまりにも魅力的です。

フランスの官僚主義には困惑させられ、時間にルーズな職人たちには工事を中途で放り出され、自分勝手な隣人たちにはあきれさせられ、予想外に寒いミストラルに苦しめられながらも、プロヴァンス生活が大好きになってしまった著者の思いが、本書の中にぎっしりと詰まっているんですね。

それは何といっても、素朴でありながら、食事とワインには異常なまでにこだわるプロヴァンスの人たちが、人生を楽しんでいるからなのでしょう。

いや、「食へのこだわり」こそが本書の中心といってもいいほどです。旬の食材を知る所からはじまり、市場での買い物やワインの試飲は真剣そのもの。食事を作るのにも食べるのにもたっぷりと時間をかけ、おいしいレストランには眼がなく、それぞれ食に関する一家言を有するプロヴァンス人は、とにかく濃い!

著者の語り口もいいんです。1年近くたっても一向に進まない自宅の改修工事が、「クリスマスに工事完成を祝うパーティを開く」と宣言したとたんに、一気に工事が進んでしまうなんて、爆笑もの。^^

やはり、旅行者の視点ではなく、新参者の居住者として新鮮な好奇心を失わずに隣人たちに素直に共感していく姿勢があってこそ書けた作品です。でも淡白な日本人は、濃厚なプロヴァンス人とはつきあいきれないかも・・。濃厚で大量のプロヴァンス料理も食べ切れなさそうです。^^;

2012/4