フィギュアスケートに打ち込む名古屋の小学6年生の竹中朱里の1年間を描いた物語は「ジュニア小説」に分類されるのでしょうが、侮ってはいけません。
基本は「スポ根小説」ですが、練習施設の確保や費用や両親にかかる負担など、フィギュアスケート選手をめざす者には避けて通れない周辺事情や、アクセル、ルッツ、フリップ、サルコウ、トゥループという各種ジャンプの技術的な説明もしっかり書き込まれています。
最近は重視されないコンパルソリーの練習を通してエッジの使い方を学んだり、日本式の「上に跳ぶジャンプ」より質の高い跳び型をめざせる、欧米で主流の「飛距離を伴うジャンプ」を学ぶ朱里ちゃんの練習風景も、分りやすく描かれているんですね。もちろん、小学生らしく友人関係に悩みながらも、フィギュアの上達に懸命な朱里ちゃんが魅力的に描けているからこその面白さです。
費用負担に耐え切れない家庭事情を察した姉は自発的にスケートを辞めており、両親から「バッジテストで5級に受かるか、県大会で3位以内に入らない場合はクラブを辞める」と約束させられた朱里ちゃんは果たして・・。続編もあるとのことです。朱里ちゃんが人間的にもスケーターとしても成長していく過程、読みたいですね。
2012/1