りぼんの読書ノート

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舟を編む(三浦しをん)

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「言葉の海を渡る船=辞書」の編集者たちの物語。辞書編纂者というと、19世紀英国「オックスフォード英語大辞典」のマレー博士や、明治日本「言海」の大槻文彦などを思い浮かべますが、本書の登場人物も個性的です。

玄武書房の営業部で変人扱いされていた馬締(マジメ)は、定年間近の辞書編集者の荒木によって辞書編集部に迎えられ、日本語研究に人生を捧げている老学者の松本や、徐々に辞書に愛情を持ち始めるチャラ男の西川、有能な嘱託女性の佐々木らとともに、新しい辞書『大渡海』を編み始めるのですが、問題は山積みで完成は気が遠くなるほど先に思えるばかり。

そして時は流れ、辞書編集部は13年ぶりに新しいメンバーを迎えます。女性ファッション誌の担当から辞書編集への異動にとまどう若い女性・岸辺みどりが見たものは、辞書発行への大詰めを向かえて「てんやわんや状態」の編集部でした。でも実際に辞書が出版されるまでには、そこからさらに2年を要するのです。その間に岸辺もまた、辞書編集に魅せられてしまうんですね。^^

恋愛が成就して「天にものぼる気持ち」になった時にも「のぼる」と「あがる」の違いを考え込んでしまったり、新しい言葉の用例を見聞きするたびにメモをとるなど、「生涯を賭ける」との表現も決して大げさではないほど言葉に対して真剣に向き合う男女たちの物語は、楽しく感動的です。

「オックスフォード英語大辞典」を編纂したマレー博士とマイナー博士の交流を描いた博士と狂人( サイモン・ウィンチェスター)と読み比べてみるのも楽しいですね。

2012/1