りぼんの読書ノート

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ニキの屈辱(山崎ナオコーラ)

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「誰にでも分かる言葉で、誰にも書けない文章を書きたい」と言う著者の新作は、生きるのに不器用な若い人気女性写真家と、男性アシスタントの間に生まれた恋愛感情の変化を描いた作品ですが、これが何ともレビューを書きにくい・・。

ニキの不器用さは、1歳年上のアシスタント加賀美への態度に端的に現れます。とにかく傲慢。ほとんど無視。パシリ以下の扱い。でもこれが、ニキの加賀美に対する恋心の現われだったとは!

加賀美君のほうもニキに好意を抱いていたものの、思いを伝えられないままに奴隷のように仕えていましたが、やがてふとしたきっかけから2人の関係は恋愛へと発展していきます。これだけなら普通のラブロマンスにすぎませんが、やがて独立して写真家への道を歩み始めた加賀美君の心はニキから離れていき・・。

そして、ニキガ屈辱を感じるときがやってきます。「ニキの屈辱」とは、普通の女の子のように恋愛して失恋したニキが、自分に対して抱く感情なんですね。別れを確認するための久々の再会に、化粧をしてスカートをはいていそいそ出かけていく自分自身に屈辱を感じてしまうのです。

ニキの振る舞いはかなり痛々しいのですが、彼女はそんなこと自覚していないし、他人にそんなことを思って欲しくもないのでしょう。彼女が感じたという「屈辱感」にこそ、ニキの不器用な力強さや逞しさが現れていると思えます。自分が抱いた恋愛感情に屈辱を感じるような女性だからこそ、彼女は失恋を超越して再起できると思うのです。

こんな読み方で良かったのでしょうか?

2011/10