りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ちりとてちん(藤本有紀)

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NHK朝ドラのノベライズ本です。福井県若狭市の伝統塗箸職人の家に育った「ヘタレ少女」の和田喜代美が、高校を卒業して一大決心。単身で大阪へと飛び出して上方落語と出会い、徒然亭若狭として落語家を志す物語。

もちろん順風満帆に進むわけではありません。はずみで入門した徒然亭一門を率いる三代目草若は、上方芸能を支配する天狗芸能から追放されて酒びたりの日々。弟子たちは四散してただひとり二番弟子の草々が残っているのみ。喜代美の内弟子生活は、師匠にやる気を起こさせて、弟子たちを呼び戻すところから始まります。

やがて喜代美は落語家としてデビューし、再起した徒然亭草若と弟子たちは、念願の「落語の常打ち小屋」建設に向けて動き出すのですが・・。

タイトルは、お囃子の三味線の音色と、知ったかぶりで腐った豆腐を食べる同名の落語の演目からつけられています。そのほかにも、人生そのものが「落語的エピソード」に満ちている喜代美と周囲の人物たちですから、伝統落語と重なるエピソードが満載で楽しめます。

喜代美に劣等感を抱かせる同名の同級生・和田清美の存在は「天災」ですし、うっかり財布を投げてしまう「愛宕山」、借金取りへの対応は「掛け取り」、川に石を投げた音を身投げと勘違いする「辻占茶屋」、前金で芸者遊びをして叱られる「船弁慶」・・。そうそう、向かいの居酒屋は「寝床」でした。

どれもベタですけど、有名な噺の解説や、時には出演者による再現ドラマも挿入されるなど、工夫して作られているようです。ドラマで見たら、もっと楽しめたかも・・。^^

2011/10