りぼんの読書ノート

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アレクシア女史、倫敦で吸血鬼と戦う(ゲイル・キャリガー)

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19世紀。ヴィクトリア女王の下で繁栄を極め世界制覇を果たしたイギリスの秘密は、「異界族」を受け入れて共存したことでした。女王の影のブレーンである「宰相」は吸血鬼で、「将軍」は人狼だったのです。

主人公は、イタリア人との混血で26歳のオールドミス(!)のアレクシア嬢。実は彼女はロンドンにひとりしかいない「反異界族」で、異界の住民をワンタッチで人間に戻してしまう能力を持つ女性だったんですね。その効力はタッチしている間に限定されているのですが。

吸血鬼や人狼たちから「ソウルイーター」と呼ばれて恐れられていたアレクシア嬢は、舞踏会の晩に「はぐれ吸血鬼」から襲われてしまいます。もちろんいつも持ち歩いている真鍮パラソルで簡単に撃退したのですが、彼女のことを知らずに襲ってくる命知らずの吸血鬼がいるなんて異常なこと。

はたして、彼女とは犬猿の仲である人狼の異界管理局捜査官マコン卿や、親友の吸血鬼ケルダマ卿から聞き出した情報では、群れをなさない「はぐれ異界族」の失踪事件が相次いでいるとのこと。事件の解明に乗り出したアレクシア嬢ですが、彼女の異能力が通用しない魔人から、新薬品クロロホルムで襲われてしまいます。いったい誰が何をもくろんでいるのでしょうか・・。

設定が面白いですね。ジェイン・オースティンの世界をホラーに変えてしまった高慢と偏見とゾンビとは一味違った楽しい読み物に仕上がりました。

エーテルや飛行船など19世紀テクノロジーを駆使した「スチーム・パンク」的側面も、現代では魅力的な元気娘でも19世紀の貴族社会では「はしたないダメ娘」でしかなく、そこからさらに逆転して「玉の輿」ストーリーとなる展開も楽しめます。

2011/10