かつて主人公を棄ててチャンピオンのもとに走ったものの零落し、亡くなった姉の息子を抱えてその日暮らしをしている元恋人と再会し、負け犬ばかりが集まった一行は、プロレスラーの妹の婚約者というイラン人から怪しげな手紙を託されてマイアミへと向かいます。ところが手紙を届けた相手はリング上で射殺され、その男から預かっていた書類を巡って、CIAやモサドやマフィアやクルド人組織から追われるハメに!
その書類は、イランの政治情勢に関する極秘情報と、パーレビ国王の財産の隠し場所を示していたんですね。政治には興味ないけれど、隠し財産は手に入れたい! 宝探しに乗り出したメンバーは、カーチェイスや銃撃戦に巻き込まれていき・・。「明るく悲惨なバイオレンス・アクション」ですが、最近見ないタイプです。こういう小説は「バブル時代」の産物だったのかもしれません。
居住地域が中東各国やトルコ、旧ソ連に分割され、各国の思惑で弾圧されているクルド民族の問題を知ったのは、著者の名作『砂のクロニクル』でしたが、本書はその10年前に、クルド民族を小説で取り上げていたんですね。
2011/8