有名な作品ですが、これまでジュブナイル版しか読んだことがなかったようです。あらためて全訳を呼んで見ると、結構きわどいシーンも多いんですね。
はじめの2巻のストーリーは有名です。17世紀のパリに上京してきた、ガスコーニュ地方の貧乏貴族の息子ダルタニャンが、同郷の英雄で近衛銃士隊長トレヴィル傘下の三銃士、アトス、ポルトス、アラミスと次々と決闘を果たすハメに陥りますが、決闘の最中に銃士隊の仇敵・リシュリューの護衛士に襲われて、三銃士とともに闘うことを選びます。リシュリュー派の剣客を下してダルタニャンは三銃士と生涯の友情を結ぶのでした。
そして、リシュリューの陰謀に陥れられたルイ13世王妃アンヌ・ドートリッシュを窮地から救い出すべく、三銃士とともにイングランドのバッキンガム公爵のもとへと密かに向かう冒険までが第一部。この時ダルタニャンは、王妃の下着係の人妻、コンスタンス・ボナシュー夫人に恋してしまいます。
あらためて読んでみたら、「ダルタニャンと三銃士こそが正義の味方」との思い込みがいかに誤っていたか、愕然としちゃいました。リシュリューの罠に嵌ったとはいえ、フランス王妃がイギリス国王の寵臣と密会してはまずいでしょう。しかもそれが、国家間の戦争へと発展してしまうのですから。ミラディーがバッキンガム公爵を暗殺させた事件など、フランス側から見ると勲章もの。しかもミラディーがダルタニャンに恨みを抱くに到った理由ときたら、完全に男が悪い!
ともあれ本書が現在まで読み継がれているのは、爽やかな青年剣士ダルタニャンと、それぞれキャラ立ちした三銃士の魅力によるところが大きいのでしょう。リシュリューだって、「フランス王室に貢献する優れた政治家」という側面がしっかり描かれているので、敵役として魅力ある人物です。逆に、銃士たちのふるまいが子どもっぽく見えてしまうほど。
第2部『二十年後』、第三部『ブラジュロンヌ子爵』も続けて読んでみたくなりました。日本では講談社版『ダルタニャン物語(全11巻)』が、長らく絶版になっていましたが、最近「復刊ドットコム」で見事復刊を果たしました。チャンスです!
2011/8