りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

メロディ・フェア(宮下奈都)

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無人島にひとつ好きなものを持っていくとしたら、迷わず口紅を選ぶだろう」というほど化粧に興味があった結乃は、大学卒業後、地元のショッピングセンターの化粧品カウンターに勤めるビューティ・パートナーとなります。

念願の「ひとをきれいにする仕事」についたけど、期待していたデパート配属ではなかったし、なかなかお客もつかず売り上げも伸びないし、ちょっぴり自信喪失状態。職種は様々でも、就職したばかりの女性なら誰でも経験することですよね。

そのショッピングセンターに、毎日夕方流れる音楽が「Melody Fair」です。「Who is the girl with the crying face looking at millions of signs♪」まだ自分の魅力に気づいていない女の子を励ます曲。^^

この曲のように、結乃はさまざまな経験をして、自分に自信を持っていくんですね。死の床についた夫を、自分が若かった頃のような化粧をして見舞いたいというお婆さん。人の心を読めるために、何も勧められなくなってしまって辞めた、前任者の白田さん。いつも「鉄仮面」と呼ばれるほどの厚化粧をして通りがかる、幼馴染みのミズキ。「世界征服をしたい」と言っていた彼女も、夢を叶えられなかった女性だったようです。そして、化粧好きの姉を冷ややかな眼で見る、化粧嫌いの妹・珠美。

実は、姉が化粧を好きになり、妹が化粧嫌いになった背景には、かつて2人が子どもの頃家族の中で起きた「ある事件」があったのです。同じ事件を一緒に経験しながら、姉妹は正反対の方向に反応してしまったのですね。でも母の依頼で妹に化粧を施した夜に、2人は気づきます。化粧しないことが自由というわけでもない。化粧でどんな顔にもなれるけれど、どんな口紅をつけても私は私。

一歩踏み込んでいくと、背景には悲しい物語も潜んでいそうなエピソードもあるのですが、あえて明るく、コメディ・タッチで書いたような小説です。ちょっと軽めの印象ですけどね。でも、男の人にはわからない世界だろうなぁ。^^

2011/4