りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

ピスタチオ(梨木香歩)

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「自然と共生する生命」をテーマにして独特の物語世界を紡ぎ出している梨木さんがアフリカに関心を持つようになるのは、ある意味「必然」だったのかもしれません。出版社を辞めてアフリカに渡り、今は日本に戻ってライターとして生活している翠のペンネームは「棚」。彼女にアフリカ取材の話が来たところから物語が動き始めます。

アフリカで会ったことがある、アフリカ呪術に関するフィールドワーカー片山海里の急死を知らされ、彼の遺作に登場するダバ(悪意の塊・・かと思うと必ずしもそうでもなくて、本書のキーワードのひとつ)と、老愛犬のマースの子宮に出来た腫瘍の関連を気に留めながらもアフリカに渡った翠を待っていたのは、不思議な「繋がり」でした。片山海里と縁のあった呪医のところで出会った女性は、翠こそが、武装勢力LRAに拉致された双子の妹の行方に導く運命を持った人だと言い出すのですが・・。

本書の主題は、超自然でもなければ、ましてやアフリカの呪術ではありません。自然に対する畏れや親しみを感じながら生きるという、ごく当たり前の感覚を大事にしようということなのでしょう。「自然との共生」を大上段に振りかぶって論じるのではなく、さりげなく「物語」として捧げ出すような梨木さんの姿勢には共感を覚えます。

個人的には、中島らもさんのガダラの豚のような、思いっきりドロドロしたアフリカ呪術の物語も好きなのですが・・(笑)。

2011/2