りぼんの読書ノート

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嫌な女(桂望実)

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挑発的なタイトルですが、2人の女性の「人生」を描いた、しみじみとした作品に仕上がっています。

語り手は、新米弁護士の徹子。物語は、同い年で遠い親戚の夏子が弁護士事務所に持ち込んできた訴訟から始まります。夏子から一方的に婚約を破棄された男性が、夏子に慰謝料を請求してきたというのです。どうやら結婚詐欺まがいの行為を働いた夏子に非があるようですが、そこはクライアント。なんとか男性を説得するのですが、これだけでは済みません。

夏子が問題を起こして徹子に尻拭いを頼む関係は、2人が70代になるまで続くのです。そもそも徹子は、初対面だった7歳の時から夏子のことが大嫌いなんですけど。自分勝手で、性悪で、したたかで、そのくせ「男をその気にさせる天才」の夏子を好きになる同性なんて、いるわけありませんけど。^^;

おかしいのは、夏子の「男を騙す手口」が年齢を重ねるに連れて「進化」していくこと。若い頃は結婚詐欺や寸借詐欺だったものが、中年になると年寄りの後妻ポストを狙ったり、保険金詐欺をたくらんだり、病院で介護をしながら遺産を狙ったりするんですね。

生涯を通じて夏子に振り回され続ける徹子ですが、夏子の「いい面」もわかってきます。夏子に騙された男たちは、将来の夢を見たり、過去を楽しく思い浮かべたりもしたりで、自分の人生を豊かなものと思うようになっているようなのです。そして徹子は、夏子の最大の理解者になっていくのです。

読者は最後に、もつれるように絡み合う、「詐欺師」夏子と「弁護士」徹子の2人の人生がお互いのおかげで、お互いに豊かなものにし合っていたことに気づかされるはず。県庁の星以来、あまりパッとしなかった桂さんですが、久々の佳作でしょう。

2011/2