りぼんの読書ノート

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バイバイ、ブラックバード(伊坂幸太郎)

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伊坂さんはこの作品について「理不尽なお別れはやり切れません。それでも無理やり笑って、バイバイと言うような、そういうお話を書いてみました」と言っています。太宰治の絶筆『グッド・バイ』から想を得て書かれた物語。

5人の女性と「誠実に」付き合っていた星野という男性が、暗い運命に足を踏み入れてその全員との別れを強制されるという設定。暗い世界から使わされた見張り役として、別れを見届けるのは、傍若無人な巨魁女の繭美。「繭美と結婚することになった」という冗談のような言い訳を用意して、女性たちに理不尽な別れを持ち出す星野は、彼女らに最後の誠意を尽くすんですね。

苺狩りで出会った不倫に疲れた女「廣瀬あかり」には、ジャンボラーメンの大食いを。刑事に車を奪われて出会った母子家庭の「霜月りさ子」には、当て逃げ犯人の逮捕を。深夜にロープを抱えて歩く女泥棒もどきの「如月ゆみ」には、武装覆面強盗の撃退を。(実際に撃退したのは繭美ですが・・^^)

耳鼻科で出会った計算マニアの税理士「神田奈美子」には、乳がん検査結果の心配を。女優の「有須睦子」にはスクープを防いであげるのですが、少女時代に「お姉ちゃん、女優になったら」と勧めた近所の小学生が星野だったことが、ホロリとさせました。

誰に対しても誠実で、何に対しても一生懸命になってしまう星野は、やはり「人間失格」です。でも小賢しく保身に走る者が大半の現代社会では「聖者」のようにも思えてきます。

繭美もそう思ったのでしょう。この2人、本当に結婚したらいいカップルになるのかも・・。でも、その前にバイクのスターターペダルをキックしないと!

2011/1