りぼんの読書ノート

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小説フランス革命6 フイヤン派の野望(佐藤賢一)

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国王一家の国外逃亡失敗という事態を受けて、憲法制定議会は揺れ動きます。国王の罪を問うつもりのない三頭派(バルナヴ、デュポール、ラメット)ら穏健派は、ジャコバン・クラブを離脱してフィヤン・クラブを設立し、圧倒的多数派を握ります。彼らは、立憲王政に満足して、これ以上の革命継続を望んでいないブルジョワジーの意向を代表しているんですね。

さらに、集会を弾圧して50人もの死者を出した「シャン・ドゥ・マルスの虐殺」が左派に追い討ちをかけるのですが、これはラ・ファイエットの勇み足。非難を浴びたラ・ファイエットは国民軍司令官の職を辞すハメに陥るのですから。

憲法が制定されたこの時期、戦争が大きな焦点となってきています。ルイ16世は王権復活のために諸外国からの反革命戦争を待望していた模様ですが、目的は違えどそれに乗ったのは、ジャコバン派ロベスピエールの盟友であり続けたブリソや新パリ市長のペティオンら。後にジロンド派と名づけられる勢力です。

貴族出身者を将校に据える国軍も、戦闘に慣れていない国民衛兵隊も頼りにならないと、ひとり反戦演説を行なう、この時期のロベスピエールには孤独の影が漂いますね。右派や穏健派が次々と袂を別って行く中で、相対的に左傾していくロベスピエールを訪ねてきたのは、後に側近として腕を振るうことになる、若きサン・ジュストでした・・。

この巻のラストで、「革命の継続に耐えられない」とパリを去っていくバルナブの姿が印象的でした。ロベスピエールより年少でありながら、フイヤン派の若き領袖となったバルナブには、開戦とともにいっそうの純化をはじめる革命の将来が見えていたのかもしれません。

いよいよ次巻では、革命の大転換点となるフランス革命戦争がはじまりそうです。

2010/12