りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

音もなく少女は(ボストン・テラン)

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原題は『WOMAN』。「創造者」であり「保護者」であり「破壊者」であろうとした女性たちの、静かで激しい闘いを描いた物語。彼女たちが闘った相手は、弱い女性たちに暴力を振るう男性であり、女性に対して理不尽な世界。

一方で本書は、3人の女性たちの間に育まれた友情と母娘の愛情の物語でもあるのです。夫に虐待され続けながらも信仰を失わず、娘のために夫との対決を決意するクラリッサ。聴力障碍を持ちながら、カメラを手にして自分を拒む父親と世界に対峙する少女イブ。その母娘と教会で運命の出会いを果たし、援助の手を差し伸べる孤高の女性フラン。彼女にはナチスによって恋人を殺され、強制的に子宮摘出手術を受けさせられた過去がありました。

冒頭で断片的に紹介される、3つの場面が効果的です。
・イブの写真を眺めつつ、ためらいながらも真実を告げようとするイブの友人ナタリー。
・フランが殺人を犯したとして自首したことを伝える新聞記事。
・そして、恋人チャーリーと初々しく愛の言葉を手話で交わす17歳のイブ。

本書を読み進めてイブの過酷な少女時代を知った読者は、素晴らしい恋人と巡り合えたことが彼女にとってどれほど貴重なものだったのか、フランが殺害したとされる相手がどのような人物なのかを理解していくことになります。そして最後になってナタリーが見つめる写真の正体を知らされた読者は、あまりにも絶妙な構成に感心、いや感動すら覚えることでしょう。

女性を虐待し続ける男どもに対して、自分よりさらに弱い女性たちのために闘いに挑む女性たちの姿を、凛々しく、気高く、崇高に描いた素晴らしい作品です。

2010/12