りぼんの読書ノート

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俺の後ろに立つな(さいとうたかを)

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17歳で漫画家デビューしてから、75歳になる現在までの60年間近くを、劇画界のトップランナーとして走り続けてきた、さいとうたかをさんの「一代記+エッセイ」です。

さいとうさんの作品は『ゴルゴ13』しか知らないのですが、手塚修虫さんの漫画とは対極にある作風ということはわかります。もっとも、ご本人は小学生の時に手塚さんにあこがれて作品を応募したことがあるそうです。

ところが両氏とも、大の映画ファンなんですね。もっともさいとうさんが好きなのは、手塚さんに影響を与えたディズニーアニメではなく、ストーリー性に富んだ実写映画だそうです。「さいとう・プロダクション」に分業制や脚本部門を取り入れたのは、映画製作過程を模したとのこと。

そこから、辰巳ヨシヒロ、石川フミヤス、佐藤まさあき小池一夫小山ゆうらの漫画家が育ってきたわけですから、「劇画界のトキワ荘」のようだったのでしょうか。(作品を知ってるのは「俺は直角」や「がんばれ元気」の小山ゆうさんだけですが・・)

「ゴルゴ13」の国際情勢分析は、全く脚本家に任せているんですってね。なまじの知識があると先入観に影響されてしまい、「書けない」そうです。作家の船戸与一さんが、「ゴルゴ13」の脚本を書いていたというのは有名な話。

そのあたりは面白かったのですが、「偉そうなオヤジの説教」のような人生論部分はいただけません。劇画論は貴重なご意見でしょうし、熱烈なファンの映画論まではまだ聞けますが、教育論や、幸福論や、血液型性格論や、経営戦略論や、あげくは人間の起源が宇宙人とかの「とんでも論」まで本気で語るのですから、むしろイタい。「ゴルゴ13」製作秘話だと思って読んだのですが、そんな話はほんのちょっとだけ。このタイトルに騙されました。

2010/11