りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

火星年代記(レイ・ブラッドベリ)

イメージ 1

人類初の火星への探検隊は、1人も帰還しませんでした。続く2度の探検隊も帰還しなかったのですが、それでも人類は火星へと押し寄せます。やがて火星には地球人の町が次々と建設され、火星人は姿を消してしまいます。彼らは、地球人のもたらしたウィルスによって滅亡したのでしょうか、それとも・・。

やがて地球では大戦争が勃発し、火星へ移住してきた人々も次々と帰還していきます。地球での戦争がエスカレートしていく中、火星は見捨てられてしまうのでしょうか。火星人と地球人が残した二重の廃墟にうごめく者は果たして・・。

1950年に発表された、人類の火星進出をめぐる連作短編集です。第一次探検隊が火星に到達した年は、1999年から2030年に変更されており、収録作も若干入れ替えられているとのことですが、ほとんどが旧訳のままですからかなり「古典的」な雰囲気も漂っています。その辺は「あえて」なのでしょう。

SFというより、どことなく、新大陸発見に続く近世アメリカ史のようです。火星をアメリカ大陸に、火星人をインディアンに置き換えると、すさまじい風刺性を感じてしまうのですが、著者の狙いはそこにあるのでしょうか。火星人をキリスト教に「教化」しようとする牧師の登場は、笑うところなのかしら? でも、もっと叙情的な作品として読むべきなのかもしれません。

2010/9再読