りぼんの読書ノート

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修道士カドフェル9 死者の身代金(エリス・ピーターズ)

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このシリーズ、しばらく間をおいていましたが久々に借りてきました。少々飽きがきていたのです。

スティーブン王の支配で安定するかにみえたイングランドは、モード妃の巻き返しで混沌としていきます。1141年には、モード派との戦いに敗れたスティーブン王が捕虜になる事態が発生。長い無政府時代の始まりです。忠実なスティーブン派であったシュールズベリ州にとっては、ショックな事態です。本巻はまさにスティーブン王が捕虜になった戦いで、州執政長官のプレストコートもウェールズ勢の捕虜になってしまったところから始まります。

シュールズベリに囚われたウェールズの身分ある青年イリスとの捕虜交換が決まり、負傷したプレストコートはカドフェルのいる修道院に運ばれて手当てを受けますが、なんと修道院内で絞殺されてしまったのでした。

捕虜になっていた間に長官の娘と恋に落ちていた青年イリスが疑われますが、他にも長官を嫌っていた者も多く捜査は難航。せっかく修復がなったウェールズとの関係に亀裂が入る恐れも出てくる中で、決め手となったのは死者の咥内に残された金の糸。殺人に高価な布地が用いられたわけです。まるで『検屍官』のような捜査ですね。^^

ウェールズと隣接するシュールズベリとの微妙な関係がうかがえる巻でした。ウェールズには統一王権は確立していず、各地方は領主に支配されていたのですが、それぞれが勝手な行動をとっていたのですね。シュールズベリと共闘する領主がいる一方で、内戦に乗じて襲撃や略奪をする勢力がいたのも、当然のことなのでしょう。

両国にまたがる2組の男女の恋も、前途多難なようです。第5巻:死を呼ぶ婚礼に登場した未亡人エイヴィスが、美しくて勇敢な修道尼マグダレンとなって再登場したのも印象的でした。

2010/10