りぼんの読書ノート

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国芳一門浮世絵草紙4 浮世袋(河治和香)

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浮世絵師・歌川国芳の娘、登鯉(とり)を主人公とした連作シリーズ第4弾。登鯉の娘時代は過ぎようとしています。芸者や花魁となった幼馴染たちの境遇が変化していく中、登鯉の出生の秘密も明かされ、彼女の運命も転機を迎えるのですが、黒船が来航して時代も大きく動いていきます。

巧味(うまみ)
歌舞伎役者・坂東しうかの演目のために、入れ墨を模した絵付けを頼まれた登鯉ですが、幼馴染の柳橋芸者・島次が見栄のためにしうかを一晩買うと聞いて驚きます。絵付けも男女のことも、何もかも洗いざらいにしたら旨味はなくなるのでしょうが・・。

女時(めどき)
肺の病と診断された登鯉は、自身の死の影を感じてしまいます。追い討ちをかけるように聞こえてきたのは、世話になった高野長英の逮捕と死亡。登鯉の中に吹く無常の風。「女時」とは「男時(おどき)」の逆で、何をやってもダメな時だそうですが・・。

牛狐(もうこんこん)
無愛想な花魁が高野長英の娘・おもとと知って驚く登鯉ですが、一方でやはり幼馴染の吉原花魁の豊岡が出産し、父親を名乗り出た若旦那に見受けされて米屋のおかみさんに治まってしまいます。パッと全取っかえできる女の人生のほうが可笑味があるのかも・・。

鯉病(こいやまい
懇意にしている町奉行・遠山の金さんが卒中で倒れて隠居。金さんと国芳は、若い頃にひとりの女性を巡って因縁があったと聞きますが、その女性こそ登鯉の母親のようです。その頃、背中に鯉の彫り物を背負った老夜鷹が、ひっそりと息を引き取ります。

兵端(ひょうたん)
黒船来航で世情が騒然とする中、団十郎が自殺。後を追うように名女形のしうかも急死。国芳にも、心を寄せる新場の顔役・小安にも肺の病を知られてしまった登鯉は、自身の死を意識してしまいます。

国芳が実の父親ではなかったというのも驚きましたが、登鯉ちゃんは男運が悪いだけと思っていたら、シリアスな展開になってきました。

2010/10