めちゃくちゃ暑い日が続きましたが、読書量は落ちませんでした。今年の夏はあまり休めず、せっせと通勤していたからでしょうね。通勤電車内が、最大の読書場所なんです。それとベッドの中。^^ 8月には大御所の若いときの作品を2つ読みました。アーヴィングさんの処女作『熊を放つ』と、ハインラインさんの『夏への扉』。作風は全く異なりますがどちらも若々しさに溢れ、みずみずしい感性が光っています。1.サラの鍵(タチアナ・ド・ロネ)
自分が手を下したわけではない過去の悲惨な出来事に対して、人はどう向き合って、どんな態度をとることができるのでしょう。フランス人の手によるユダヤ人狩り「ヴェルディヴ」を取材したジュリアは、夫の祖母のアパルトマンから60年前に連行された少女サラの記録を入手します。サラの悲しみを自分の悲しみとして捉えることによって、ジュリアは自分自身と向き合っていくのですが・・。
2.熊を放つ(ジョン・アーヴィング)
大戦前後のウィーンとユーゴスラビアの混乱と悲劇を一身に背負ったような両親の思いを、「動物園解放」というかたちで昇華を試みる破天荒な青年ジギーと出合った、落ちコボレ学生のグラフが、ジギーの遺志を継ごうとする物語。後に『ガープの世界』で花開く「圧倒的な物語」の萌芽が見て取れる作品です。
大戦前後のウィーンとユーゴスラビアの混乱と悲劇を一身に背負ったような両親の思いを、「動物園解放」というかたちで昇華を試みる破天荒な青年ジギーと出合った、落ちコボレ学生のグラフが、ジギーの遺志を継ごうとする物語。後に『ガープの世界』で花開く「圧倒的な物語」の萌芽が見て取れる作品です。
3.数えずの井戸(京極夏彦)
「数えること」は人生への満足や不満を象徴する行為なのでしょうか。「皿屋敷怪談」のどのバージョンもつじつまが合わないとして退けて、「真実」に迫るという冒頭から、『百物語』の又市と徳次郎が事件を振り返る終章までが、一気の展開です。本書では2人の別の人物として描かれる「青山播磨守主膳」が
対峙して一体となったときに生まれるものは、狂気にほかなりません。
「数えること」は人生への満足や不満を象徴する行為なのでしょうか。「皿屋敷怪談」のどのバージョンもつじつまが合わないとして退けて、「真実」に迫るという冒頭から、『百物語』の又市と徳次郎が事件を振り返る終章までが、一気の展開です。本書では2人の別の人物として描かれる「青山播磨守主膳」が
対峙して一体となったときに生まれるものは、狂気にほかなりません。
4.読んでいない本について堂々と語る方法(ピエール・バイヤール)
「本は読んでいなくてもコメントできる。むしろ読んでいないほうがいいくらい」? 完璧な「読書」と完璧な「非読」との間にある「未読の諸段階」の議論は、読者を迷路に誘い込みます。でも「読んでいない本について語る」とは「自分自身を語る」との意味で自己発見であり、「創造的プロセスへの第一歩」なんですって。それが言いたかったのか・・。ここに記しているレビューの意味すら、考えさせられてしまいました。
「本は読んでいなくてもコメントできる。むしろ読んでいないほうがいいくらい」? 完璧な「読書」と完璧な「非読」との間にある「未読の諸段階」の議論は、読者を迷路に誘い込みます。でも「読んでいない本について語る」とは「自分自身を語る」との意味で自己発見であり、「創造的プロセスへの第一歩」なんですって。それが言いたかったのか・・。ここに記しているレビューの意味すら、考えさせられてしまいました。
【その他今月読んだ本】
・道徳という名の少年(桜庭一樹)
・民王(池井戸潤)
・バスカヴィル家の犬(コナン・ドイル)
・婆沙羅(山田風太郎)
・新参探偵、ボツワナを騒がす(アレグザンダー・マコール・スミス)
・蟻の時代(ベルナール・ウェルベル)
・リミット(五十嵐貴久)
・満州国演義2 事変の夜(船戸与一)
・不思議のひと触れ(シオドア・スタージョン)
・少女には向かない職業(桜庭一樹)
・変愛小説集2(岸本佐知子編)
・紅無威おとめ組 壇ノ浦の決戦(米村圭伍)
・シャーロック・ホームズの帰還(コナン・ドイル)
・私の家では何も起こらない(恩田陸)
・ソルハ(帚木蓬生)
・盗まれたコカ・コーラ伝説(ブライアン・フォークナー)
・ザ・万遊記(万城目学)
・満州国演義3 群狼の舞(船戸与一)
・「ウィジェット」と「ワジェット」とボフ(シオドア・スタージョン)
・道徳という名の少年(桜庭一樹)
・民王(池井戸潤)
・バスカヴィル家の犬(コナン・ドイル)
・婆沙羅(山田風太郎)
・新参探偵、ボツワナを騒がす(アレグザンダー・マコール・スミス)
・蟻の時代(ベルナール・ウェルベル)
・リミット(五十嵐貴久)
・満州国演義2 事変の夜(船戸与一)
・不思議のひと触れ(シオドア・スタージョン)
・少女には向かない職業(桜庭一樹)
・変愛小説集2(岸本佐知子編)
・紅無威おとめ組 壇ノ浦の決戦(米村圭伍)
・シャーロック・ホームズの帰還(コナン・ドイル)
・私の家では何も起こらない(恩田陸)
・ソルハ(帚木蓬生)
・盗まれたコカ・コーラ伝説(ブライアン・フォークナー)
・ザ・万遊記(万城目学)
・満州国演義3 群狼の舞(船戸与一)
・「ウィジェット」と「ワジェット」とボフ(シオドア・スタージョン)
2010/8/31記