『極大射程』にはじまる「ボブ&アール・スワガー・サーガ」は『狩りのとき』で区切りがついているのですが、天才的な狙撃手アール・スワガーというアメリカン・ヒーロー的なキャラクターを手放すのが惜しかったんでしょうね。前作の『四十七人目の男』に続いて、晩年の狙撃手が活躍する独立した物語。
親元を離れてヴァージニアの新聞社で記者として働いているボブの娘ニッキが、正体不明のクルマに襲われます。昏睡状態で入院した娘を案じて現地に飛んだボブが目にしたものは、執拗にニッキを狙い続ける襲撃者の存在でした。
ここ、ヴァージニアとテネシーの州境にあるブリストルの街には、全米のスピードファンを熱狂させるナスカーレースが行なわれるサーキットがあるんですね。カーレースの日を選んで奇想天外な大仕事をもくろんでいる一味が、覚せい剤問題の取材中に偶然、犯罪の手がかりを掴んだと思われるニッキを襲撃したのですが、犯罪の黒幕は意外な人物でした・・。
実際の汚れ仕事を請け負う「グレムリー一族」という血縁的な犯罪者集団が登場しますが、これはボブの父アールが『悪徳の都』で対決したグラムリー一家の末裔ですね。中世ヨーロッパの山賊集団みたいな連中ですが、21世紀アメリカにはまさかいませんよね。
衰えを見せないボブの活躍は見事でしたが、せっかくの名作シリーズが、このままだと普通の「キャラクター・アクション」に堕してしまいそう。思い切って、ボブの娘ニックを主人公にした新シリーズを書かれてはいかがでしょうか?父親のボブはチラッと姿を見せるだけにして・・。
2010/2読了