りぼんの読書ノート

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善良な町長の物語(アンドリュー・ニコル)

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北欧のどこか、バルト海沿岸にある小さな町トッド。世界から孤立しているような町の、純朴な町長ティボが恋をします。愛しく思う相手は、ベラスケスの「鏡のヴィーナス」のように美しい町長秘書アガーテ。ところが、町長の恋には障害があったのです。それはアガーテが人妻だったということ・・。

一方のアガーテは、幼児を亡くしてからセックスを恐れている夫から無視され続け、存在を否定されているかのような日々に、悩み苦しんでいます。おずおずと好意を示してくれた町長に対して、アガーテは少しずつ心を開き始めます。いつしか二人はランチをともにするようになり、理想の家で暮らす夢を語り合うようになっていくのですが、あまりにも純朴な町長は、最後の一歩を越えることができません。アガーテはすっかりその気になっているのに・・。ん~っ! やきもきする!

驚くべきことに、二人の純愛物語は幻想的な展開となっていきます。そもそもこの物語の語り手は、町の守護聖女ヴァルプルニアでしたし、魔女の血を引くセザール母子や、幻のサーカス団も登場し、なんとアガーテは変身!果たして二人の恋の行方は・・。

あまりにも不器用な二人の恋物語ですが、著者の心理描写は確かです。中学生の頃の純情な気持ちを思い出しながら読みました。悲しく、せつなく、楽しい小説です。

2010/2