りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

幼女と煙草(ブノワ・デュトゥールトゥル)

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死刑執行を目前に控えた囚人が、法律で保障されている「最後の希望」に煙草を要求。しかし刑務所の所長が所内完全禁煙の規則を盾にしてそれを拒否したために、騒動が持ち上がります。死刑執行は一旦延期されますが、煙草会社、法曹界、政治家を巻き込んで、事態は混乱の度合いを深めていきます。

一方、完全禁煙の市庁舎のトイレで煙草をくゆらしていた職員は、幼い女の子に現場を目撃されてしまいます。市長の人気取り政策で市庁舎に託児所を作ったために、職場が子どもの遊び場となっていたんですね。それに業を煮やしていた職員は、女の子を脅して追い払ったのですが、彼には女児虐待の容疑が降りかかって来ます。

ブラックユーモアのレベルを超えてしまいました。何も考えていない死刑囚の若者が英雄扱いされる一方で、真面目に働いている職員には怖しい運命が襲い掛かってくるのですから。でも、それがテロリストと関わりはじめて、ほとんど悪夢のような世界が読者を待ち受けています。

著者は禁煙や子どもの保護に反対しているわけではなく、それが過度に行き過ぎること、あるいは、中身のない空疎なアピールに終始していることを皮肉っているようですけど、優柔不断な刑務所所長や、中身のない宣伝に踊らされて「世間の声」となっているのがアジアやアフリカからの移民だったりするあたりには、別の主張も入り込んでいそう。この種の小説や主張は、注意深く読み取らないといけないのかも知れません。

2009/12読了