りぼんの読書ノート

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山田風太郎明治小説全集11 ラスプーチンが来た(山田風太郎)

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日露戦争中、若きレーニンらロシアの革命家たちに資金と武器を与える諜報活動を行い、ロシアの内乱を企てて日本を勝利に導いた、スーパースパイ明石元ニ郎の若き日の物語。1891年、ロシア皇太子ニコライが日本訪問の際に警備の巡査から斬りつけられた「大津事件」に、あのラスプーチンと当時の明石中尉が関係していようとは!

例によって、明治期の「そうだったかもしれない歴史」が縦横無人に展開されます。シベリア旅行中のチェーホフと出合って日本行きを決断した怪人ラスプーチン。貧民外に潜むラスプーチンの通訳を買って出た、ロシア文学を愛する二葉亭四迷。「明治の清少納言紫式部」とまで呼ばれて皇后の覚えもめでたかったものの、宮女から退官して大占師・稲城黄天と行動をともにする才女・下村宇多子女子。

さらに内村鑑三、乃木稀典、森鴎外、川上操六、川上音二郎なども登場して、「大津事件」の裏で暗躍したラスプーチンらと絡みます。「大津事件」の犯人である津田三蔵の双子の弟・津田七蔵が乃木稀典の従者だったなどの設定も。やがて怪僧ラスプーチンの執念が、明石が妻と選んだ運命の美少女・雪香に向けられるに至って、両雄対決!

ラスプーチンが日本を訪れたという記録はないそうですが、1890年から2年ほど消息不明となっていた時期があり、後年にニコライ二世が息子アレクセイの血友病を治療祈願を行なう際にラスプーチンの名前を聞き、「あの男なら知っている」と言ったとのエピソードから紡ぎ出された物語。果たして2人は大津で遭遇していたのか? 十数年後、舞台を欧州からロシアに移しての、怪僧ラスプーチンとスパイ明石大佐との「対決第二章」を、読んでみたいものですが・・。

2009/12