りぼんの読書ノート

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修道士カドフェル6 氷のなかの処女(エリス・ピーターズ)

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1139年冬。スティーブン王の勝利で決着がついたと思われたイングランドの王位継承争いが、諸侯の統制の乱れに乗じた女帝モードの逆襲で再燃してきます。

モード軍のウスター攻略の際、多くの避難民に混じってシュールズベリを目指していたはずの貴族の姉弟が行方不明になってしまい、修道院長の指示で捜索に出たカドフェルが発見したのは、凍った小川の中で命を落としていた美女でした。果たして、彼女は貴族の姉なのか・・。

ミステリ要素は少ない巻でした。隠し砦を拠点として村々の略奪に回る悪党一味の存在を炙り出して退治するという、まるで黒澤映画のような展開がメインストーリーです。どの時代でも、どの国でも世相の乱れに乗じてこういうヤカラは現れるものなんですね。こういう時代ですから、一見善人と思える荘園主にだって、悪魔はささやきかけてくるのです。

ところで、貴族の姉弟の後見人となった十字軍帰りの騎士が、女帝モードについたことが事態を複雑にしていきます。シュールズベリの町はスティーブン派ですから、騎士も、騎士の使いも、おおやけには捜索に加わることができなんて、まだるっこしい。

そんな中、騎士の使いとして姉弟を救出して、姉のアーミーナといい雰囲気になるオリーブ色の肌の若者、オリヴィエ・ド・ブルターニュの正体が明らかになります。十字軍騎士との混血児として中東で生まれた若者は、なんと・・!!! 次巻以降の展開も楽しみです。

2009/12