りぼんの読書ノート

Yahooブログから移行してきた読書ノートです

2009/11 シルフ警視と宇宙の謎(ユーリ・ツェー)

大江健三郎さんの『万延元年のフットボール』を再読しました。「これこそが現代日本の小説」と思わせてくれた名作です。読み返す価値は十分にありました。

11月もたくさん読みましたが、これぞ「No.1」という作品には巡り合えなかったかな。森見さん、三浦さん、海堂さんの作品も悪くはないけど、大江さんの名作と比較しては気の毒でしょう。その反動なのか、11月の上位に選んだのは、SFとファンタジーっぽい作品ばかり。
1.シルフ警視と宇宙の謎(ユーリ・ツェー)
パラレルワールド」の信奉者と反対論者の、2人の物理学者たちが「偶然に」起こしてしまった事件は不思議なものでした。反対論者は自分が「パラレルワールド」的な事態を引き起こしてしまったことに、信奉者は「多くの可能性から選択をするのは自分自身である」と気付くのです。事件は、優秀な「観察者」である警視によって収拾されるのですが・・。

2.宵山万華鏡(森見登美彦)
宵山」の晩を舞台にした6編の連作短編集、というより、互いに関連し合う3つの出来事をそれぞれ「表」と「裏」から眺めた物語から成り立っています。不思議な世界の舞台裏を種明かしするかと見せて、さらにもう一度、現実的な解釈を覆すという展開が、京都の宵の不思議さを深めてくれます。

3.ハイペリオンの没落(ダン・シモンズ)
過去のSF名作の真髄を利用して、キーツの詩作をテーマに再構成された物語は「人類の神」と「AIの神」による天上の抗争を描き出していきます。「人類の神」を呼び出すものは「恐怖」ではなく「共感」であり、詩人によってもたらされるものだったとの展開は素晴らしいのですが、長すぎますね。


【ランク対象外(別格)】
万延元年のフットボール(大江健三郎) 再読


2009/12/1